福井の実家近くに永平寺(えいへいじ)という禅寺がある。曹洞宗大本山で開祖が道元(どうげん)。故事によると道元には義介(ぎかい)と懐奨(えじょう)という弟子がおり、義介が後継者として有力視されていたが、道元は懐奨に後を継がせた。その理由について「義介は頭がよいが、老婆心が足りない」と語ったという。
このエピソードを読んで以来、「老婆心」という言葉が頭の片隅にずっと残っている。
老婆心とは、老婆が必要以上にいろいろと気を回すことから転じて相手のことをあれこれと細かく気にかけること。ビジネスでも、遠慮して、時には面倒がって、共有していると思いこんでいることを言わずにいることで、行き違いが生じることがある。
「ひょっとして」相手がこんなことで勘違いしないか、困らないか、ということに思いを巡らし、失礼かもしれないがあえて念押ししたり、確認をとったりすることに躊躇しないことが大切だ。
仕事を円滑に進めるために老婆心が足りているかどうか。いつも頭の片隅に置いておきたいと思う。