名古屋と金沢間に「名金線」という日本一長い路線バス(国鉄)があった。そのバスの車掌を務めていた佐藤良二さん(故人)は、沿道に30万本の桜を植え、太平洋と日本海を結ぶ桜の道を作ろうと考えた。
そのきっかけは、沿線の御母衣(みほろ)ダムの底に沈んだ村から移植された桜の古木だった。この桜がたくましく生き続け見事に開花した姿と、その桜を水没村の形見として大切にする村人を見て、佐藤さんは心を揺さぶられた。
そして佐藤さんの挑戦が始まった。桜の苗木を我が子のように一本一本育て沿線に植えていった。
30万本には遥かに及ばなかったが、今では大きな桜の木となって道行く人の目を楽しませている。
桜を観ると思い出す、佐藤さんのすばらしい生涯だと思う。

