少数言語の絶滅を救う日本人

豪州・アボリジニの少数言語の一つ・ワルング語の最後のたった一人の話者の引継ぎ手になった日本人の記事に興味を惹かれた。

「アボリジニの言葉に再び命を吹き込んだ日本人」
http://jvtacademy.com/blog/co/one/2012/09/post-13.php

「私がワルング語を話す最後の者だ。私が死ねば、この言葉も死ぬ。私の知るすべてをお前に教えるから、しっかりと残してほしい。(I am the last one to speak Worrongo. When I die this language will die. I will teach you everything I know, so put it down properly. )」という最後のネイティブの言葉を守った日本人(角田さん)がいることに驚きと誇りを感じる。

そういえば、豪州・エアーズロック(ウルル)がつい先日登山禁止になった。私は登っていないが、先住民にとって聖地なので、もっと早くに禁止して良かったのではないかと思う。

7年前のちょうど今頃、登山口に来たら「登るな」と言わんばかりに急に強風になったことを思い出す。撮ったら、なぜか頭が青みがかって不思議な感じだった。

偶々机上を整理していたら当時先住民から買わせていただいた絵が出てきたので、メモを兼ねてアップすることに。

ウルル
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生まれる時と葬られる時の姿勢は同じ

WIPカレンダー(2019版)「絶滅しそうな言語、絶滅した言語」
11月:ドマー語 話者:340人(パキスタン最北部)
「シン」=手足を縮めて身を小さくすること(生まれる時と葬られる時)

話者数が340人ということは、言語としての絶滅は免れないだろう。

言語は違うが、日本語で「シン」は、身であり、深であり、慎であり、神であるので、実は深いところで言語がつながっているのかもしれない。「シーン」とした不思議な静寂がそこ(あの世とこの言葉)にあるような・・(笑)

あの世からこの世へ渡る時、この世からあの世へ渡る時、旅に不安があるせいか、怖いと思う時、身構える時と同じ姿勢になるのは不思議。

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インドネシアは少数言語の宝庫

WIPカレンダー(2019版)「絶滅しそうな言語、絶滅した言語」

10月:ドホイ語 話者:8万人(インドネシア・カリマンタン島)
「ボロソコモダップ」=莫大な量の小さな何か(雨以外)が降ること

2024年にインドネシアの新首都が移転されるカリマンタン島。マレー人はボルネオ島と呼ぶ島だが、そこで話されている沢山の少数言語のうちの一つがドホイ語だ。

「ボロソコモダップ」(=莫大な量の小さな何かが降ること)の響きは「ボロクソ」「タップリ」の語感にも似ていて実に面白い!

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日系の 苦労の先に ルンルン・ルルン

WIPカレンダー(2019版)「絶滅しそうな言語、絶滅した言語」
9月:アヤクーチョ・ケチュア語
話者:90万人(ペルー南部山岳地帯)
「ルルン」=農作物が大量に実ったこと

ケチュア語とはインカ帝国の末裔の人たちが話す言葉。同語で「ルル」とは実のことだが、「ルルン」には、日本語の「ルンルン」にも似た語感がある(笑)

ペルーは、南米で初めて日本と国交を結び、初めて日本から移民を受け入れた。日系ペルー人はフジモリ元大統領を始め10万人もいるらしい。開拓移民の人たちは、大変なご苦労をされたと思うが、豊作の時はきっとルンルン気分になったに違いない。

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語学の達人 デビュー

ポケトークを入手した。試しにニュース原稿の一文(画面)を日英翻訳をしてみたら悪くない。w(゚o゚)w

日英翻訳はグーグル、その他はNICT(情報通信研究機構)の翻訳エンジンが採用されているらしい。手の中で語学の達人がデビューした感じ(笑)

いずれまもなく、外国語(特に会話)は学ばなくて良い時代がやってくると思う。

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驚いた 右も左も ない言葉

「右も左もわからない」とは対象についてチンプンカンプンのことだが、東インドネシアのラマホロット語にはなんと「右」「左」という概念がないらしい。 w(゚o゚)w

代わりに「山側」「海側」「西」「東」を意味する言葉で場所を特定するらしい。インドネシア近辺の言語では珍しくない。実に面白い「空間認識」だ。

かように世界には色んな言語があり「世界観」がある。我々の「常識」が必ずしも「常識」ではない。実に愉快愉快。

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アフガニスタンの英雄 マスード

WIPカレンダー(2019版)「絶滅しそうな言語、絶滅した言語」

7月:ワハン語 話者:6万人(アフガニスタン・ワハン地区、タジキスタン等)
「プルデュユーヴン」=家畜に乳を出す気にさせること

ワハン語は、主にアフガニスタンの北東部、タジキスタン南東部で話され、別名ワヒ語・ワヒー語とも言う。

日本ではあまり知られていないが、アフガニスタンのゲバラと呼ばれ、ソ連やタリバン(ターリバーン)と戦った国家的英雄マスードの地元。彼は「9.11」の2日前に暗殺されたが、世界的なテロが起きることを欧米に警告していたらしい。

報復は当たり前という部族社会の伝統文化の中で、「主義を理由に人を殺すことには反対」という貴重な人材がいたことをメモ。

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画像: https://blog.goo.ne.jp/geradeaus170718/e/9c321a32dea19fe685a68872b8ece0a3

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画像: Wikipedia

絶滅しそうな言語:ウイルタ語

WIPカレンダー(2019版)「絶滅しそうな言語、絶滅した言語」

2月:ウイルタ語・話者:10~50人(ロシア・サハリン(樺太))
「シマナ」=(雪は雪でも)降っている雪

戦前、日本領だった南樺太。当時在住するウイルタ人は日本国籍。戦後一部は北海道に移住したが、差別にあって文化的に日本に同化してしまった。

同文化を保存しようという運動もなくなり、ウイルタ語とその文化がほぼ消滅しようとしているのは悲しくて切ない。

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少数言語の90%が今世紀中に絶滅

少数言語の翻訳について取材。数え方によるが、現在世界に3,000〜8,000ある言語、その90%が今世紀中に絶滅すると言われている。話者が100万人いないと安定しない。

言語が失われることは、その世界観と文化が丸ごと失われること。日本語が失われることを想像すればその悲しみがわかるだろう。少数言語の翻訳は正直採算が取れないことが多いが、仕事で携わることで1ミリでもその歯止めにつながるなら嬉しい。


日刊工業新聞 2017/5/26
https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00429746

今後ますます母言語重視の時代へ

世界には、1億人以上が話す母言語が10、5千万人以上が話す母言語が26、存在します。

英語ネイティブ話者は3億6千万人で第3位。共通語の地位は当面揺るぎませんが、世界中の人はやはり母言語で読みたいし書きたいし話したいので、今後ますます母言語重視の時代になっていきます。

何でも英語で済ませる時代はすでに終了しています。

ちなみに、中国語(普通語)も中国の地方の人にとっては「外国語」です。

ネイティブ話者人口ランキング
http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_languages_by_number_of_native_speakers

外国語に翻訳された日本語著作物:言語数トップ3

メモ:日本語で書かれた著作物で翻訳された言語数 トップ3

1. ノルウェイの森(村上春樹):36言語
2. 窓ぎわのトットちゃん(黒柳徹子):35言語
3. 源氏物語(紫式部):30言語

日本は外国語→日本語で翻訳大国だが、日本語→外国語はまだまだ少ない。もっともっと世界に翻訳されるべきものが眠っている。

ちなみに、聖書関連以外で世界No.1は・・・
星の王子様(サン=テグジュペリ):216言語

「星の王子様」を超えるもの、日本に一杯あります!

グッダイマイト! オーストラリア英語

都市部や若い世代で強い方言が見られなくなってきた豪州ですが、まだまだオージーイングリッシュと呼ばれる英語は健在でした。

歴史的にイギリスの影響が強く、文法・スペリング・発音もイギリス英語がベースとなっています。

独特の口語も多く、発音ではA (エー)を「アイ」と発音するなどの特徴があります。

例えば、8=アイト、Sunday=サンダイ、駅=スタイション等々。

Good day, mate! (グッダイマイト!) と挨拶すればもうあなたは豪州人! 因みに男性言葉です~

コラ語とボー語(ボ語)が地球上から消滅

ベンガル湾(インドの東側)に浮かぶ群島、インド領アンダマン諸島で先住民が話していた2つの言語、コラ語(Kora)とボ語(Bo)の最後の話者が相次いで亡くなった。

ニュースによると、亡くなったのはボロさん(79歳)とボアさん(85歳)で、両人とも「大アンダマン島人」と呼ばれるネグリート系先住民族の末裔。約65,000年前にアフリカから渡ってきたとの説もあり、人類最古の文化を伝える言語のうち2つが絶滅するというのはあまりに悲しい・・・

言語は民族文化を伝えるDNA。今世紀中に世界の90%の言語が絶滅すると言われているが、百花繚乱の世界文化が一つずつ消滅していく流れは止められないものか。少数言語を保護・記録する運動を少しでも応援したいと改めて思う。


http://en.wikipedia.org/wiki/Andamanese_languages