「沈まぬ太陽」:不思議なさわやかさが後に引く

沈まぬ太陽 [DVD]
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を(遅ればせながら)観了。

主人公・恩地元は「国民航空」の労働組合委員長を務め、ストライキ権を武器に労使交渉で勝利する。しかし報復人事で左遷、パキスタン(カラチ)→イラン(テヘラン)→ケニア(ナイロビ)勤務を強いられ、日本に戻れない日々に苦悶する。片や、労組で一緒に戦っていた副委員長・行天四郎は経営陣に懐柔され、出世の道を突き進む。

その後、ようやく日本に戻れた恩地を待っていたものは、御巣鷹山墜落事故担当、激務が彼を襲う。そのうち、総理大臣の肝入りで関西財界の現場主義的経営者が会長職に招かれ、彼は会長室へ抜擢配属される。そして、会社に巣食っていた不正を摘発することとなる。

しかし、その不正の一部が政権に不都合となったため、会長が辞めさせられ、恩地に再度アフリカへの配属命令が下る・・・というストーリーだ。

これでもか、これでもかと、身に降りかかる試練。それは、「これでも幸せでいられるかい?」「これでも楽しくしていられるかい?」と神に試されているかのようだ。

墜落事故で家族全員を失った方の絶望感に比べれば自分の試練など・・・という自己処理も少し登場するが、アフリカの悠久な大地が自分の悩みをちっぽけなものに感じさせてくれる。その納得感のほうが好きだ。

敗北にもくよくよしない、男らしく黙々と耐えながらも、逆に不思議なさわやかさが漲るラストシーンは、ヘミングウェイの作品に通じるものがある。傑作。

★★★★★

追伸:
それにしても、山崎豊子さんの作品は悪役と善役がはっきりしている。わかりやすいが、現実はここまではっきりしない。

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