東豊さん(神戸松蔭女子学院大学人間科学部心理学科教授)と吉井伯榮さんの対談「母が娘に伝えたかった仲良し家族の秘訣」の中で、東さんが述べています。
人の中に病気があります。あるいは性格があります。悩んでいる人は、私は病気の人間だ、私の性格はおかしいというように、自分のものとして悩んでいるわけです。つまり内在化しているわけです。病気や性格を自分自身の一部として見ている。実はこれがやっかいな状態。病気や性格を責めることはすなわち自分自身を責めることになるからです。
もっといえば、家族等の周りの人たちも結果的にその人を責めることになります。つまり「病気を責めること=その所有者である人物を責めること」、「この人間の問題行動を責めること=この人物を責めること」という具合。内在化された状態では、たとえば両親や学校の先生が何らかの問題や症状のある子供さんを責めるというシステムになりがちです。
このように内在化された状態では実は変化が起きにくい。それを変えるために、一つの技法「外在化」を行うわけです。つまり、人から病気や問題を外に出して分離する作業。これがうまくいくと、その人は病気・問題を責めますが自分は責めない。
家族等の周辺の人もその人を責めないで病気や問題そのものを責める。言わば、罪を憎んで人を憎まず。つまり、本人と家族や関係者が真に協力して病気・問題と対決するというシステムができあがるのです。そのようなシステムチェンジの必要があり、これを何とかできないかと思っていたところ、たまたまひらめいたのが「虫退治」という儀式です。
要は、周りの人や子どもに問題行動があった時、原因は「虫がついている」とする見方をとるということです。
不登校の場合、性格や親の対応は関係ない。原因は「虫がついている」と(笑)
すると、虫退治のために、本人と一緒になって取り組みましょう、と視点が変わります。外在化するのがポイントなんですね。「個人」対「個人」ではなく、「虫」対「個人連合」とするわけです。
マインドセットがちょっと変わるだけで見方が変わる例。勉強になります。
