人生、何が起きるかわからない

登別温泉・第一滝本館。知る人ぞ知る南外吉さんという波乱万丈の人生をくぐった人が中興の祖として同館の歴史に名を刻んでいる。

彼は最初水運会社で巨万の富を築いた。しかし洪水にあって倉庫も船も失って一文無しになってしまう。お金に困って、その後、札幌の風呂屋で釜焚きをするが、風呂屋が閉鎖して失職。

次に300坪の土地を借りて大豆を作ったら大成功。全財産をはたいて3000坪の土地を借りて大豆を作ったら大雨で大失敗、借金を抱えてしまう。

その後、旅館に養子にやっていた息子を頼って、その旅館の下男の仕事を始めた。苫小牧の駅前で旅館案内をするために吹雪の中で、毎日必ずずっと立って客待ちをしていたらしい。

その頃、滝本さんという老夫婦が登別で5部屋ほどの旅館を経営していたが、後継ぎがいないというので買い手を探しているとき、客待ちをしている南外吉の姿を見ていた登別森林鉄道の社長が、外吉さんに「滝本館」を買わないかと声がけした。しかし外吉さんにはお金がない。社長は「私が全部貸してあげるから、お金ができたら返してくれ」と言ってくれた。そのお金で滝本館を買い取った。63歳の時だった。

その後、外吉さんは75歳で亡くなるが、5室の滝本館がその後30年で400室の温泉旅館になった。

まさに塞翁が馬。人生、なにが起きるかわからない。