米国で現地生産を指揮した元トヨタ自動車副社長・荒木隆司さんが貴重なアドバイスを述べている。(2011.11.24朝日新聞夕刊)
成功の理由は人の管理方法でしょう。米国の自動車工場はワーカーをコストとしか見ていなかった。制服がなくTシャツ姿で、食堂がないから機械の横に座って弁当を広げる。
そこで制服を作り、食堂を建てて管理職も一緒に食べた。エアコンも入れた。米国人管理職も「これがいいと思ってたんだ」と言う。誇りを持った従業員が、制服のままスーパーで買い物していました。「俺はトヨタの社員なんだぞ」って。
米国人に一番衝撃的だったのは生産ラインを止める権限が与えられたことでしょう。米国は「止めるな。規定時間に規定の台数を生産しろ。悪ければ検査ではねる」。日本は「自分の判断で止めていい。みんなで対策を考えよう」。懸命に考え品質が改善されます。
現地生産は「日本車が高品質なのは日本部品で日本人が作るから。アンフェアだ」というビッグ3の声を封じ、トヨタ生産方式が世界中で通用すると証明しました。トヨタの本当のグローバル化の始まりでした。
日本のやり方にもユニバーサルに通じる部分がある。「日本のやり方+現地の意見」でどこまで現地にローカライズするか、加えて、どこまで現地の人たちに「俺たちの会社」という意識になってもらうか、が大切であることに改めて気付かせてくれる。
こうした先人の工夫と努力があって、カンター元米通商代表の次のような言葉につながるのだろう。
「GMが潰れても誰もトヨタやホンダを恨まない。日本メーカーは米国の会社になったからね」