台風に名前をつける

日本では、台風を番号で呼ぶ。何号、と。だが国際的には、アジアの台風には名前がついているのをご存知だろうか。

2000年から、日本を含む14の国と地域が10ずつ名前を出し合い、140の名を順番に使い回している。カンボジアやタイやベトナムが持ち寄った言葉が並ぶ中で、日本が提供しているのは星座の名である。

コイヌ、トモ、ヘビ、カジキ、コト、クジラ、コグマ、トケイ、トカゲ、ヤマネコ・・・なんだかかわいいものも多い気がする(笑)

誰が考えたのか知らないが、これはなかなかのアイデアだと思う。地上で動き回る凶暴なものに、天上の静かでかわいい星座の名前をつける。慰めか、それとも、どうかかわいいものであってくれ、という祈りのようなものだろうか(笑)

ちなみに、19世紀末のオーストラリアに、クレメント・ラッグという気象学者がいた。彼は嵐に、自分の気に入らない政治家の名前をつけたという。あの男が今、海の上で暴れている、という具合である。人名を与えるとは、対象に人格を認めることであり、同時に、こちらが相手を掴んだつもりになることでもある。

面白いのは、大きな被害を出した台風は、その名を永久に引退させる決まりがあることだ。二度と使われない。

これは、忌み名に近い感覚だろう。もう呼ばないでおこうということ。

名前を与えて、名前を奪う。思えば、人間が自然の脅威に対してできることはその程度でしかない。

コメントを残す