東野圭吾さんが亡くなった。六十八歳。訃報が伝えられたのは昨日である。
コロコロ意見や考えを変えるのは自分の得意技だ、と彼は言った。意見を変えたら恥だとか、一旦ああ言ってしまったから引っ込みがつかないなどと思っていないか、と。いくらでも変えて構わない。人の意見を聞いて、人間は変わったほうがドラマチックだ。肩の力を抜いて、どんどん変化して生きていこう。
軽やかな言葉である。だが、これを言うには胆力が要る。
歳を重ねるほど、人は変われなくなる。守るべき立場ができ、これまで言ってきたことの一貫性が気になり、前言を撤回する場面が減っていく。変わらないことを、信念と呼び替えるようにもなる。私にも覚えがある。
エンジニアとして働きながら小説を書き始め、四十年で百六冊を残した人である。書くたびに作風を変え、同じ場所に留まらなかった。得意技である変化をし続けたからこそ、あれだけの物語が出てきたのだろう。
意見を変えるのは、負けたことではない。人の話を聞いた、ということである。そう思えば、少し楽になる。今日から少し、肩の力を抜こうと思う。
ご冥福をお祈りします。

※画像:読売オンライン https://www.yomiuri.co.jp/culture/book/articles/20231206-OYT8T50145/