「お客様は神様です」の本当の意味

10月から、企業にカスタマーハラスメント対策が義務づけられた。客からの暴言や不当な要求から従業員を守る、法律上の責任が生じたことになる。

この種の話題になると、必ず引かれる一句がある。そう、「お客様は神様です」。

歌手の三波春夫さんが口にしていた言葉だ。若い人は知らないか。だが本人の説明によれば、意味はまるで違う。

歌う者は、澄みきった心でなければ良い歌を届けられない。神前で祈るときに同じように、ステージからみた観客の皆さまを神さまだと思って、自分の芸を捧げる。そういう、芸人の心構えを語った言葉だった。

客が偉い、という話ではなく、捧げる側の心構えの話だった。それがなぜか、客が店員に向かって、「俺は客だぞ、神様だぞ」という話になった。

なぜ逆に広まったのか。一説には、当時の漫才師(主にレッツゴー三匹)が物真似でこの台詞を使い、客いじりの決め文句として流行したことが大きいらしい。舞台の冗談が、いつのまにか客側の権利主張の根拠として独り歩きしたわけだ。

言葉は、作った人の手を離れると、離れた先で、しばしば正反対の意味を帯びることがある。半世紀にわたって、この国の多くの店員たちは、ありもしない神様に頭を下げてきた。

誤解が解けるのに、50年かかった。

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